方から少しは機嫌《きげん》の直るように仕向けてくれなくっちゃ困るじゃないか。あれを御覧な、あれじゃまるであかの他人が同《おん》なじ方角へ歩いて行くのと違やしないやね。なんぼ一郎だって直に傍へ寄ってくれるなと頼みやしまいし」
 母は無言のまま離れて歩いている夫婦のうちで、ただ嫂《あによめ》の方にばかり罪を着せたがった。これには多少自分にも同感なところもあった。そうしてこの同感は平生から兄夫婦の関係を傍《はた》で見ているものの胸にはきっと起る自然のものであった。
「兄さんはまた何か考え込んでいるんですよ。それで姉さんも遠慮してわざと口を利《き》かずにいるんでしょう」
 自分は母のためにわざとこんな気休《きやす》めを云ってごまかそうとした。

        十四

「たとい何か考えているにしてもだね。直《なお》の方がああ無頓着《むとんじゃく》じゃ片っ方でも口の利きようがないよ。まるでわざわざ離れて歩いているようだもの」
 兄に同情の多い母から見ると、嫂の後姿《うしろすがた》は、いかにも冷淡らしく思われたのだろう。が自分はそれに対して何とも答えなかった。ただ歩きながら嫂の性格をもっと一般的に
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