》めの好い座敷が塞《ふさ》がっているとかで、自分達は直《ただち》に俥《くるま》を命じて浜手の角を曲った。そうして海を真前《まんまえ》に控えた高い三階の上層の一室に入った。
そこは南と西の開《あ》いた広い座敷だったが、普請《ふしん》は気の利《き》いた東京の下宿屋ぐらいなもので、品位からいうと大阪の旅館とはてんで比べ物にならなかった。時々|大一座《おおいちざ》でもあった時に使う二階はぶっ通しの大広間で、伽藍堂《がらんどう》のような真中《まんなか》に立って、波を打った安畳を眺《なが》めると、何となく殺風景な感が起った。
兄はその大広間に仮の仕切として立ててあった六枚折の屏風《びょうぶ》を黙って見ていた。彼はこういうものに対して、父の薫陶《くんとう》から来た一種の鑑賞力をもっていた。その屏風には妙にべろべろした葉の竹が巧《たくみ》に描《えが》かれていた。兄は突然|後《うしろ》を向いて「おい二郎」と云った。
その時兄と自分は下の風呂に行くつもりで二人ながら手拭《てぬぐい》をさげていた。そうして自分は彼の二間ばかり後《うしろ》に立って、屏風の竹を眺める彼をまた眺めていた。自分は兄がこの屏風の
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