ろに矛盾があるかも知れません。けれども私は断言します。兄さんは真面目《まじめ》です。けっして私をごまかそうとしてはいません。私も忠実です。あなたを欺《あざむ》く気は毛頭《もうとう》ないのです。
私がこの手紙を書き始めた時、兄さんはぐうぐう寝ていました。この手紙を書き終る今もまたぐうぐう寝ています。私は偶然兄さんの寝ている時に書き出して、偶然兄さんの寝ている時に書き終る私を妙に考えます。兄さんがこの眠《ねむり》から永久|覚《さ》めなかったらさぞ幸福だろうという気がどこかでします。同時にもしこの眠から永久覚めなかったらさぞ悲しいだろうという気もどこかでします」
底本:「夏目漱石全集7」ちくま文庫、筑摩書房
1988(昭和63)年4月26日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版夏目漱石全集」筑摩書房
1971(昭和46)年4月〜1972(昭和47)年1月
※底本の誤植が疑われる箇所は、岩波文庫、新潮文庫、角川文庫の全てで確認できたもののみを修正し、注記した。
入力:柴田卓治
校正:伊藤時也
1999年6月13日公開
2004年2月26日修正
青空文庫作成ファイル:
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