るならば、私は今より数層倍の手数《てかず》と労力を費やしても厭《いと》わないつもりです。
私は私の親愛するあなたの兄さんのために、この手紙を書きます。それから同じく兄さんを親愛するあなたのためにこの手紙を書きます。最後には慈愛に充《み》ちた御年寄、あなたと兄さんの御父さんや御母さんのためにもこの手紙をかきます。私の見た兄さんはおそらくあなた方《がた》の見た兄さんと違っているでしょう。私の理解する兄さんもまたあなた方の理解する兄さんではありますまい。もしこの手紙がこの努力に価《あたい》するならば、その価は全くそこにあると考えて下さい。違った角度から、同じ人を見て別様の反射を受けたところにあると思って御参考になさい。
あなた方は兄さんの将来について、とくに明瞭《めいりょう》な知識を得たいと御望みになるかも知れませんが、予言者でない私は、未来に喙《くちばし》を挟《さしは》さむ資格を持っておりません。雲が空に薄暗く被《かぶ》さった時、雨になる事もありますし、また雨にならずにすむ事もあります。ただ雲が空にある間、日の目の拝まれないのは事実です。あなた方は兄さんが傍《はた》のものを不愉快にすると云って、気の毒な兄さんに多少非難の意味を持たせているようですが、自分が幸福でないものに、他《ひと》を幸福にする力があるはずがありません。雲で包まれている太陽に、なぜ暖かい光を与えないかと逼《せま》るのは、逼る方が無理でしょう。私はこうしていっしょにいる間、できるだけ兄さんのためにこの雲を払おうとしています。あなた方も兄さんから暖かな光を望む前に、まず兄さんの頭を取り巻いている雲を散らしてあげたらいいでしょう。もしそれが散らせないなら、家族のあなた方には悲しい事ができるかも知れません。兄さん自身にとっても悲しい結果になるでしょう。こういう私も悲しゅうございます。
私は過去十日間の兄さんを、書きました。この十日間の兄さんが、未来の十日間にどうなるかが問題で、その問題には誰も答えられないのです。よし次の十日間を私が受け合うにしたところで、次の一カ月、次の半年《はんとし》の兄さんを誰が受け合えましょう。私はただ過去十日間の兄さんを忠実に書いただけです。頭の鋭くない私が、読み直すひまもなくただ書き流したものだから、そのうちには定めて矛盾があるでしょう。頭の鋭い兄さんの言行にも気のつかないとこ
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