ふところで》をしていたら運命が何とか始末をつけてくれるだろう。死んでもいい、生きてもいい。華厳《けごん》の瀑《たき》などへ行くのは面倒になった。東京へ帰る? 何の必要があって帰る。どうせ二三度|咳《せき》をせくうちの命だ。ここまで運命が吹きつけてくれたもんだから、運命に吹き払われるまでは、ここにいるのが、一番骨が折れなくって、一番便利で、一番順当な訳だ。ここにいて、ただ堕落の修業さえすれば、死ぬまでは持てるだろう。肺病患者にほかの修業はむずかしいかも知れないが、堕落の修業なら――ふと往きに眼についた蒲公英《たんぽぽ》に出逢《であ》った。さっきはもったいないほど美しい色だと思ったが、今見ると何ともない。なぜこれが美しかったんだろうと、しばらく立ち留まって、見ていたが、やっぱり美しくない。それからまたあるき出した。だらだら坂を登ると、自然と顔が仰向《あおむき》になる。すると例の通り長屋から、坑夫が頬杖《ほおづえ》を突いて、自分を見下《みおろ》している。さっきまではあれほど厭《いや》に見えた顔がまるで土細工《つちざいく》の人形の首のように思われる。醜《みにく》くも、怖《こわ》くも、憎らしくも
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