ていなかった。それからあとは、のそのそ下へ降りて行って、顔を洗って、南京米《ナンキンまい》を食う。万事|昨日《きのう》の通りだから、省《はぶ》いてしまう。九時の例刻を待ちかねて病院へ出掛ける。病院は一昨日《おととい》山を登って来る時に見た、青いペンキ塗の建物と聞いているから道も家《うち》も間違えようがない。飯場《はんば》を出て二丁ばかり行くと、すぐ道端《みちばた》にある。木造ではあるがなかなか立派な建築で、広さもかなりだけに、獰猛組《どうもうぐみ》とはまるで不釣合である。野蛮人が病気をするんでさえすでに不思議なくらいだのに、病気に罹《かか》ったものを治療してやるための器械と薬品と医者と建物を具《そな》えつけたんだから、世の中は妙だと云う感じがすぐに起る。まるで泥棒が金を出し合って、小学校を建てて子弟を通学させてるようなもんだ。文明と蒙昧《もうまい》の両極端がこのペンキ塗の青い家の中で出逢《であ》って、一方が一方へ影響を及ぼすと、蒙昧がますますぴんぴん蒙昧になってくる。下手《へた》に食い違った結果が起るもんだ。と考えながら歩いて来ると、また鬼共が窓から首を出して眺《なが》めている。せっか
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