と螫された。臀《しり》と股《もも》と膝頭《ひざがしら》が一時に飛び上がった。自分は五位鷺《ごいさぎ》のように布団の上に立った。そうして、四囲《あたり》を見廻した。そうして泣き出した。仕方がないから、紺《こん》の兵児帯《へこおび》を解いて、四つに折って、裸の身体中所嫌わず、ぴしゃぴしゃ敲《たた》き始めた。それから着物を着た。そうして昨夜の柱の所へ行った。柱に倚《よ》りかかった。家《うち》が恋しくなった。父よりも母よりも、艶子さんよりも澄江さんよりも、家の六畳の間が恋しくなった。戸棚に這入《はい》ってる更紗《さらさ》の布団と、黒天鵞絨《くろびろうど》の半襟《はんえり》の掛かった中形の掻捲《かいまき》が恋しくなった。三十分でも好いから、あの布団を敷いて、あの掻捲を懸《か》けて、暖《あっ》たかにして楽々寝て見たい、今頃は誰があの部屋へ寝ているだろうか。それとも自分がいなくなってから後《のち》は、机を据《す》えたまんま、空《がら》ん胴《どう》にしてあるかしらん。そうすると、あの布団も掻捲も、畳んだなり戸棚にしまってあるに違ない。もったいないもんだ。父も母も澄江さんも艶子さんも南京虫に食われないで
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