おれは正しい人間だ、曲った事が嫌《きらい》だから、つまりは罪を犯すようにもなったんだが、さて犯した以上は、どうする事もできない。学問も棄《す》てなければならない。功名も抛《なげう》たなければならない。万事が駄目だ。口惜《くや》しいけれども仕方がない。その上制裁の手に捕《とら》えられなければならない。(故意か偶然か、彼はとくに制裁の手と云う言語を使用した。)しかし自分が悪い覚《おぼえ》がないのに、むやみに罪を着るなあ、どうしても己《おれ》の性質としてできない。そこで突っ走った。逃げられるだけ逃げて、ここまで来て、とうとうシキ[#「シキ」に傍点]の中へ潜《もぐ》り込んだ。それから六年というもの、ついに日光《ひのめ》を見た事がない。毎日毎日坑の中でかんかん敲《たた》いているばかりだ。丸六年敲いた。来年になればもうシキ[#「シキ」に傍点]を出たって構わない、七年目だからな。しかし出ない、また出られない。制裁の手には捕《つら》まらないが、出ない。こうなりゃ出たって仕方がない。娑婆《しゃば》へ帰れたって、娑婆でした所業は消えやしない。昔は今でも腹ん中にある。なあ君昔は今でも腹ん中にあるだろう。君は
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