》人に公言したために、やらないでも済む事、やってはならない事を毎度やった。人に公言すると、しないのとは大変な違があるもんだ。その内かあんかあんがやんだ。坑夫はまた自分の前まで来て、胡坐《あぐら》をかきながら、
「ちょっと待ちねえ。一服やるから」
と、煙草入《たばこいれ》を取り出した。茶色の、皮か紙か判然しないもので、股引《ももひき》に差し込んである上から筒袖《つつっぽう》が被《かぶ》さっていた。坑夫は旨《うま》そうに腹の底まで吸った煙《けむ》を、鼻から吹き出している間《ま》に、短い羅宇《らお》の中途を、煙草入の筒でぽんと払《はた》いた。小さい火球《ひだま》が雁首《がんくび》から勢いよく飛び出したと思ったら、坑夫の草鞋《わらじ》の爪先《つまさき》へ落ちてじゅうと消えた。坑夫は殻《から》になった煙管《きせる》をぷっと吹く。羅宇の中に籠《こも》った煙が、一度に雁首から出た。坑夫はその時始めて口を利《き》いた。
「御前《おめえ》はどこだ。こんな所へ全体何しに来た。身体《からだ》つきは、すらりとしているようだが。今まで働いた事はねえんだろう。どうして来た」
「実は働いた事はないんです。が少し事情
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