している。おまけに顔もよく見えない。ちょうどいいから少し休んで行こうと云う気が起った。幸い俵がある。この上へ尻をおろせば、持って来いの腰掛になる。自分はどさっとアテシコ[#「アテシコ」に傍点]を俵の上に落した。すると突然かあんかあんがやんだ。坑夫の影が急に長く高くなった。鑿《のみ》を持ったままである。
「何をしやがるんでい」
鋭い声が穴いっぱいに響いた。自分の耳には敲《たた》き込まれるように響いた。高い影は大股に歩いて来る。
見ると、足の長い、胸の張った、体格の逞《たくま》しい男であった。顔は背の割に小さい。その輪廓《りんかく》がやや判然する所まで来て、男は留まった。そうして自分を見下《みおろ》した。口を結んでいる。二重瞼《ふたえまぶた》の大きな眼を見張っている。鼻筋が真直《まっすぐ》に通っている。色が赭黒《あかぐろ》い。ただの坑夫ではない。突然として云った。
「貴様は新前《しんめえ》だな」
「そうです」
自分の腰はこの時すでに俵を離れていた。何となく、向うから近づいてくる坑夫が恐ろしかった。今まで一万余人の坑夫を畜生のように軽蔑《けいべつ》していたのに、――誓って死んでしまおう
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