水が流れて来る。そうしてその中でかあんかあんと云う音がする。作事場《さくじば》に違いない。初さんは、穴の前に立ったまま、
「そうら。こんな底でも働いてるものがあるぜ。真似ができるか」
と聞いた。自分は、胸が水に浸《ひた》るまで、屈《こご》んで洞の中を覗《のぞ》き込んだ。すると奥の方が一面に薄明るく――明るくと云うが、締りのない、取り留めのつかない、微《かすか》な灯《ひ》を無理に広い間《ま》へ使って、引っ張り足りないから、せっかくの光が暗闇《くらやみ》に圧倒されて、茫然《ぼうぜん》と濁っている体《てい》であった。その中に一段と黒いものが、斜めに岩へ吸いついている辺《あたり》から、かあんかあんと云う音が出た。洞の四面へ響いて、行き所のない苦しまぎれに、水に跳《は》ね返ったものが、纏《まと》まって穴の口から出て来る。水も出てくる。天井の暗い割には水の方に光がある。
「這入《へえ》って見るか」
と云う。自分はぞっと寒気がした。
「這入らないでも好いです」
と答えた。すると初さんが、
「じゃ止《や》めにして置こう。しかし止めるなあ今日だけだよ」
と但《ただ》し書《がき》をつけて、一応自分の顔をと
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