かから出て来る。あの力の出所《でどころ》はとうてい分らない。しかしこの時は一度に出ないで、少しずつ、腕と腹と足へ煮染《にじ》み出すように来たから、自分でも、ちゃんと自覚していた。ちょうど試験の前の晩徹夜をして、疲労の結果、うっとりして急に眼が覚《さ》めると、また五六|頁《ページ》は読めると同じ具合だと思う。こう云う勉強に限って、何を読んだか分らない癖に、とにかく読む事は読み通すものだが、それと同じく自分もたしかに降りたとは断言しにくいが、何しろ降りた事はたしかである。下読《したよみ》をする書物の内容は忘れても、頁の数は覚えているごとく、梯子段の数だけは明かに記憶していた。ちょうど十五あった。十五下り尽しても、まだ初さんが見えないには驚いた。しかし幸《さいわ》い一本道だったから、どぎまぎしながらも、細い穴を這い出すと、ようやく初さんがいた。しかも、例のように無敵な文句は並べずに、
「どうだ苦しかったか」
と聞いてくれた。自分は全く苦しいんだから、
「苦しいです」
と答えた。次に初さんが、
「もう少しだ我慢しちゃ、どうだ」
と奨励《しょうれい》した。次に自分は、
「また梯子があるんですか」
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