《いっぺん》足の下まで蹴落《けおと》して、堕落は同程度だが、堕落に堪《た》える力は彼らの方がかえって上だとの自信をほのめかして満足するらしい。自分は途上《みちみち》「昨日のだ」と聞くたんびに、懲役笠《ちょうえきがさ》で顔を半分隠しながら通り抜けて、シキ[#「シキ」に傍点]の入口まで来た。そこで初さんがまた愚弄《ぐろう》したんだから、自分は少しむっとして、
「這入《はい》れますとも。電車さえ通《かよ》ってるじゃありませんか」
と答えた。すると初さんが、
「なに這入れる? 豪義《ごうぎ》な事を云うない」
と云った。ここで「這入れません」と恐れ入ったら、「それ見ろ」と直《すぐ》こなされるにきまってる。どっちへ転んでも駄目なんだから別に後悔もしなかった。初さんは、いきなり、シキ[#「シキ」に傍点]の中へ飛び込んだ。自分も続いて這入った。這入って見ると、思ったよりも急に暗くなる。何だか足元がおっかなくなり出したには降参した。雨が降っていても外は明かるいものだ。その上|軌道《レール》の上はとにかく、両側はすこぶる泥《ぬか》っている。それだのに初さんは中《ちゅう》っ腹《ぱら》でずんずん行く。自分も負
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