んは饅頭笠《まんじゅうがさ》とカンテラ[#「カンテラ」に傍点]を渡した。饅頭笠と云うのか筍笠《たけのこがさ》というのか知らないが、何でも懲役人の被《かぶ》るような笠であった。その笠を神妙《しんびょう》に被る。それからカンテラ[#「カンテラ」に傍点]を提《さ》げる。このカンテラ[#「カンテラ」に傍点]は提げるようにできている。恰好《かっこう》は二合入りの石油缶《せきゆかん》とも云うべきもので、そこへ油を注《さ》す口と、心《しん》を出す孔《あな》が開《あ》いてる上に、細長い管《くだ》が食っついて、その管の先がちょっと横へ曲がると、すぐ膨《ふく》らんだカップ[#「カップ」に傍点]になる。このカップ[#「カップ」に傍点]へ親指を突っ込んで、その親指の力で提げるんだから、指五本の代りに一本で事を済ますはなはだ実用的のものである。
「こう、穿《は》めるんだ」
と初さんが、勝栗《かちぐり》のような親指を、カンテラ[#「カンテラ」に傍点]の孔の中へ突込《つっこ》んだ。旨《うま》い具合にはまる。
「そうら」
 初さんは指一本で、カンテラ[#「カンテラ」に傍点]を柱時計の振子のように、二三度振って見せた。
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