床《とこ》の下に埋《うず》めてしまう分の事である。ところがそうは行かなかった。と云うものは、刺されたなと思いながらも、針の事を忘れるほどにうっとりとなると、また一つ、ちくりとやられた。
 今度は大きな眼を開《あ》いた。ところへまたちくりと来た。おやと驚く途端《とたん》にまたちくりと刺した。これは大変だとようやく気がつきがけに、飛び上るほど劇《はげ》しく股《もも》の辺《あたり》をやられた。自分はこの時始めて、普通の人間に帰った。そうして身体中《からだじゅう》至る所がちくちくしているのを発見した。そこでそっと襯衣《シャツ》の間から手を入れて、背中を撫《な》でて見ると、一面にざらざらする。最初指先が肌に触れた時は、てっきり劇烈な皮膚病に罹《かか》ったんだと思った。ところが指を肌に着けたまま、二三寸引いて見ると、何だか、ばらばらと落ちた。これはただ事でないとたちまち跳《は》ね起きて、襯衣一枚の見苦しい姿ながら囲炉裏《いろり》の傍《そば》へ行って、親指と人差指の間に押えた、米粒ほどのものを、検査して見ると、異様の虫であった。実はこの時分には、まだ南京虫《ナンキンむし》を見た事がないんだから、はた
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