ちぶがた》でき上った笑いを急に崩《くず》したと云う自覚は無論なかった。ただ寄席《よせ》を聞いてるつもりで眼を開けて見たら鼻の先に毘沙門様《びしゃもんさま》が大勢いて、これはと威儀を正さなければならない気持であった。一口に云うと、自分はこの時始めて、真面目な宗教心の種を見て、半獣半人の前にも厳格の念を起したんだろう。その癖自分はいまだに宗教心と云うものを持っていない。
この時さっきの病人が、向うの隅でううんと唸《うな》り出した。その唸り声には無論特別の意味はない。単に普通の病人の唸り声に過ぎんのだが、ジャンボー[#「ジャンボー」に傍点]の未来に屈託している連中には、一種のあやしい響のように思われたんだろう。みんな眼と眼を見合した。
「金公《きんこう》苦しいのか」
と一人が大きな声で聞いた。病人は、ただ、
「ううん」
と云う。唸ってるのか、返事をしているのか判然しない。するとまた一人の坑夫が、
「そんなに嚊《かかあ》の事ばかり気にするなよ。どうせ取られちまったんだ。今更《いまさら》唸ったってどうなるもんか。質に入れた嚊だ。受出さなけりゃ流れるなあ当り前だ」
と、やっぱり囲炉裏の傍《そば》
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