ぼ坑夫だって、親の胎内から持って生れたままの、人間らしいところはあるだろうくらいに心得ていたんだから、この寸法に合わない笑声を聞くや否や、畜生奴《ちくしょうめ》と思った。俗語に云う怒《おこ》った時の畜生奴じゃない。人間と受取れない意味の畜生奴である。今では経験の結果、人間と畜生の距離がだいぶん詰ってるから、このくらいの事をと、鈍い神経の方で相手にしないかも知れないが、何しろ十九年しか、使っていない新しい柔かい頭へこのわる笑がじんと来たんだから、切《せつ》なかった。自分ながら思い出すたびに、まことに痛わしいような、いじらしいような、その時の神経系統をそのまま真綿に包《くる》んで大事にしまって置いてやりたいような気がする。
この悪意に充《み》ちた笑がようやく下火になると、
「御前《おめえ》はどこだ」
と云う質問が出た。この質問を掛けたものは、自分から一番近い所に坐っていたから、声の出所《でどころ》は判然《はっきり》分った。浅黄色《あさぎいろ》の手拭染《てぬぐいじ》みた三尺帯を腰骨の上へ引き廻して、後向《うしろむ》きの胡坐《あぐら》のまま、斜《はす》に顔だけこっちへ見せている。その片眼は生
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