るまい。どうせいつ死ぬか知れぬ命だ。何でも命のあるうちにしておく事だ。死んでからああ残念だと墓場の影から悔《く》やんでもおっつかない。思い切って飲んで見ろと、勢よく舌を入れてぴちゃぴちゃやって見ると驚いた。何だか舌の先を針でさされたようにぴりりとした。人間は何の酔興《すいきょう》でこんな腐ったものを飲むのかわからないが、猫にはとても飲み切れない。どうしても猫とビールは性《しょう》が合わない。これは大変だと一度は出した舌を引込《ひっこ》めて見たが、また考え直した。人間は口癖のように良薬口に苦《にが》しと言って風邪《かぜ》などをひくと、顔をしかめて変なものを飲む。飲むから癒《なお》るのか、癒るのに飲むのか、今まで疑問であったがちょうどいい幸《さいわい》だ。この問題をビールで解決してやろう。飲んで腹の中までにがくなったらそれまでの事、もし三平のように前後を忘れるほど愉快になれば空前の儲《もう》け者《もの》で、近所の猫へ教えてやってもいい。まあどうなるか、運を天に任せて、やっつけると決心して再び舌を出した。眼をあいていると飲みにくいから、しっかり眠って、またぴちゃぴちゃ始めた。
吾輩は我慢に
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