むかうのきょう》に帰臥《きが》してもいいはずであった。
 主人は早晩胃病で死ぬ。金田のじいさんは慾でもう死んでいる。秋の木《こ》の葉は大概落ち尽した。死ぬのが万物の定業《じょうごう》で、生きていてもあんまり役に立たないなら、早く死ぬだけが賢こいかも知れない。諸先生の説に従えば人間の運命は自殺に帰するそうだ。油断をすると猫もそんな窮屈な世に生れなくてはならなくなる。恐るべき事だ。何だか気がくさくさして来た。三平君のビールでも飲んでちと景気をつけてやろう。
 勝手へ廻る。秋風にがたつく戸が細目にあいてる間から吹き込んだと見えてランプはいつの間《ま》にか消えているが、月夜と思われて窓から影がさす。コップが盆の上に三つ並んで、その二つに茶色の水が半分ほどたまっている。硝子《ガラス》の中のものは湯でも冷たい気がする。まして夜寒の月影に照らされて、静かに火消壺《ひけしつぼ》とならんでいるこの液体の事だから、唇をつけぬ先からすでに寒くて飲みたくもない。しかしものは試しだ。三平などはあれを飲んでから、真赤《まっか》になって、熱苦《あつくる》しい息遣《いきづか》いをした。猫だって飲めば陽気にならん事もあ
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