人は叱りつけるように言い放ったので、三平君は
「それじゃ、どれも貰わんですね」と念を押しながら、写真を一枚一枚にポッケットへ収めた。
「何だいそのビールは」
「お見やげでござります。前祝《まえいわい》に角《かど》の酒屋で買うて来ました。一つ飲んで下さい」
主人は手を拍《う》って下女を呼んで栓《せん》を抜かせる。主人、迷亭、独仙、寒月、東風の五君は恭《うやうや》しくコップを捧げて、三平君の艶福《えんぷく》を祝した。三平君は大《おおい》に愉快な様子で
「ここにいる諸君を披露会に招待しますが、みんな出てくれますか、出てくれるでしょうね」と云う。
「おれはいやだ」と主人はすぐ答える。
「なぜですか。私の一生に一度の大礼《たいれい》ですばい。出てくんなさらんか。少し不人情のごたるな」
「不人情じゃないが、おれは出ないよ」
「着物がないですか。羽織と袴《はかま》くらいどうでもしますたい。ちと人中《ひとなか》へも出るがよかたい先生。有名な人に紹介して上げます」
「真平《まっぴら》ご免《めん》だ」
「胃病が癒《なお》りますばい」
「癒らんでも差支《さしつか》えない」
「そげん頑固張《がんこば》りなさ
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