れ得べき理由のあるべきはずがない。この覩易《みやす》き理由はあるにも関らず無教育の青年男女が一時の劣情に駆られて、漫《みだり》に合※[#「丞/(厄−厂)」、第4水準2−3−54]《ごうきん》の式を挙ぐるは悖徳没倫《はいとくぼつりん》のはなはだしき所為である。吾人は人道のため、文明のため、彼等青年男女の個性保護のため、全力を挙げこの蛮風に抵抗せざるべからず……」
「先生私はその説には全然反対です」と東風君はこの時思い切った調子でぴたりと平手《ひらて》で膝頭《ひざがしら》を叩いた。「私の考では世の中に何が尊《たっと》いと云って愛と美ほど尊いものはないと思います。吾々を慰藉《いしゃ》し、吾々を完全にし、吾々を幸福にするのは全く両者の御蔭であります。吾人の情操を優美にし、品性を高潔にし、同情を洗錬するのは全く両者の御蔭であります。だから吾人はいつの世いずくに生れてもこの二つのものを忘れることが出来ないです。この二つの者が現実世界にあらわれると、愛は夫婦と云う関係になります。美は詩歌《しいか》、音楽の形式に分れます。それだからいやしくも人類の地球の表面に存在する限りは夫婦と芸術は決して滅する事は
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