ヘまたいつの間《ま》に洋行なさったかと思って、つい真面目に拝聴していました。それに見て来たようになめくじ[#「なめくじ」に傍点]のソップの御話や蛙《かえる》のシチュの形容をなさるものですから」「そりゃ誰ゥに聞いたんでしょう、うそをつく事はなかなか名人ですからね」「どうもそうのようで」と花瓶《かびん》の水仙を眺める。少しく残念の気色《けしき》にも取られる。「じゃ趣向というのは、それなんですね」と主人が念を押す。「いえそれはほんの冒頭なので、本論はこれからなのです」「ふーん」と主人は好奇的な感投詞を挟《はさ》む。「それから、とてもなめくじ[#「なめくじ」に傍点]や蛙は食おうっても食えやしないから、まあトチメンボー[#「トチメンボー」に傍点]くらいなところで負けとく事にしようじゃないか君と御相談なさるものですから、私はつい何の気なしに、それがいいでしょう、といってしまったので」「へー、とちめんぼうは妙ですな」「ええ全く妙なのですが、先生があまり真面目だものですから、つい気がつきませんでした」とあたかも主人に向って麁忽《そこつ》を詫《わ》びているように見える。「それからどうしました」と主人は無
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