sひね》ってボイの方を御覧になって、どうも変ったものもないようだなとおっしゃるとボイは負けぬ気で鴨《かも》のロースか小牛のチャップなどは如何《いかが》ですと云うと、先生は、そんな月並《つきなみ》を食いにわざわざここまで来やしないとおっしゃるんで、ボイは月並という意味が分らんものですから妙な顔をして黙っていましたよ」「そうでしょう」「それから私の方を御向きになって、君|仏蘭西《フランス》や英吉利《イギリス》へ行くと随分|天明調《てんめいちょう》や万葉調《まんようちょう》が食えるんだが、日本じゃどこへ行ったって版で圧《お》したようで、どうも西洋料理へ這入《はい》る気がしないと云うような大気※[#「諂のつくり+炎」、第3水準1−87−64]《だいきえん》で――全体あの方《かた》は洋行なすった事があるのですかな」「何迷亭が洋行なんかするもんですか、そりゃ金もあり、時もあり、行こうと思えばいつでも行かれるんですがね。大方これから行くつもりのところを、過去に見立てた洒落《しゃれ》なんでしょう」と主人は自分ながらうまい事を言ったつもりで誘い出し笑をする。客はさまで感服した様子もない。「そうですか、私
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