猛烈な感じを起して見たいと年来心掛けているが、どうもいけないね。音楽会などへ行って出来るだけ熱心に聞いているが、どうもそれほどに感興が乗らない」と東風君はしきりに羨《うら》やましがっている。
「乗らない方が仕合せだよ。今でこそ平気で話すようなもののその時の苦しみはとうてい想像が出来るような種類のものではなかった。――それから先生とうとう奮発して買いました」
「ふむ、どうして」
「ちょうど十一月の天長節の前の晩でした。国のものは揃《そろ》って泊りがけに温泉に行きましたから、一人もいません。私は病気だと云って、その日は学校も休んで寝ていました。今晩こそ一つ出て行って兼《かね》て望みのヴァイオリンを手に入れようと、床の中でその事ばかり考えていました」
「偽病《けびょう》をつかって学校まで休んだのかい」
「全くそうです」
「なるほど少し天才だね、こりゃ」と迷亭君も少々恐れ入った様子である。
「夜具の中から首を出していると、日暮れが待遠《まちどお》でたまりません。仕方がないから頭からもぐり込んで、眼を眠《ねむ》って待って見ましたが、やはり駄目です。首を出すと烈しい秋の日が、六尺の障子《しょうじ》
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