い主人は一喝《いっかつ》にして迷亭君を極《き》めつけた。
「君は人間の古物《こぶつ》とヴァイオリンの古物《こぶつ》と同一視しているんだろう。人間の古物でも金田某のごときものは今だに流行しているくらいだから、ヴァイオリンに至っては古いほどがいいのさ。――さあ、独仙君どうか御早く願おう。けいまさのせりふじゃないが秋の日は暮れやすいからね」
「君のようなせわしない男と碁を打つのは苦痛だよ。考える暇も何もありゃしない。仕方がないから、ここへ一目《いちもく》入れて目《め》にしておこう」
「おやおや、とうとう生かしてしまった。惜しい事をしたね。まさかそこへは打つまいと思って、いささか駄弁を振《ふる》って肝胆《かんたん》を砕いていたが、やッぱり駄目か」
「当り前さ。君のは打つのじゃない。ごまかすのだ」
「それが本因坊流、金田流、当世紳士流さ。――おい苦沙弥先生、さすがに独仙君は鎌倉へ行って万年漬を食っただけあって、物に動じないね。どうも敬々服々だ。碁はまずいが、度胸は据《すわ》ってる」
「だから君のような度胸のない男は、少し真似をするがいい」と主人が後《うし》ろ向《むき》のままで答えるやいなや、迷
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