ニ家の勢力はえらいものだ、石炭の燃殻《もえがら》のような主人を逆上させるのも、苦悶《くもん》の結果主人の頭が蠅滑《はえすべ》りの難所となるのも、その頭がイスキラスと同様の運命に陥《おちい》るのも皆実業家の勢力である。地球が地軸を廻転するのは何の作用かわからないが、世の中を動かすものはたしかに金である。この金の功力《くりき》を心得て、この金の威光を自由に発揮するものは実業家諸君をおいてほかに一人もない。太陽が無事に東から出て、無事に西へ入るのも全く実業家の御蔭である。今まではわからずやの窮措大《きゅうそだい》の家に養なわれて実業家の御利益《ごりやく》を知らなかったのは、我ながら不覚である。それにしても冥頑不霊《めいがんふれい》の主人も今度は少し悟らずばなるまい。これでも冥頑不霊で押し通す了見だと危《あぶ》ない。主人のもっとも貴重する命があぶない。彼は鈴木君に逢ってどんな挨拶をするのか知らん。その模様で彼の悟り具合も自《おのず》から分明《ぶんみょう》になる。愚図愚図してはおられん、猫だって主人の事だから大《おおい》に心配になる。早々鈴木君をすり抜けて御先へ帰宅する。
 鈴木君はあいかわらず
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