セてん》のごとく逃げて行く。主人はぬすっとう[#「ぬすっとう」に傍点]が大《おおい》に成功したので、またもぬすっとう[#「ぬすっとう」に傍点]と高く叫びながら追いかけて行く。しかしかの敵に追いつくためには主人の方で垣を越さなければならん。深入りをすれば主人|自《みずか》らが泥棒になるはずである。前《ぜん》申す通り主人は立派なる逆上家である。こう勢《いきお「》に乗じてぬすっとう[#「ぬすっとう」に傍点]を追い懸ける以上は、夫子《ふうし》自身がぬすっとう[#「ぬすっとう」に傍点]に成っても追い懸けるつもりと見えて、引き返す気色《けしき》もなく垣の根元まで進んだ。今一歩で彼はぬすっとう[#「ぬすっとう」に傍点]の領分に入《はい》らなければならんと云う間際《まぎわ》に、敵軍の中から、薄い髯《ひげ》を勢なく生《は》やした将官がのこのこと出馬して来た。両人《ふたり》は垣を境に何か談判している。聞いて見るとこんなつまらない議論である。
「あれは本校の生徒です」
「生徒たるべきものが、何で他《ひと》の邸内へ侵入するのですか」
「いやボールがつい飛んだものですから」
「なぜ断って、取りに来ないのですか」

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