ん顔をして何か御互に話をしている様子だ。いよいよ肝癪《かんしゃく》に障《さわ》る。垣根の幅がもう五六寸もあったらひどい目に合せてやるんだが、残念な事にはいくら怒《おこ》っても、のそのそとしかあるかれない。ようやくの事|先鋒《せんぽう》を去る事約五六寸の距離まで来てもう一息だと思うと、勘左衛門は申し合せたように、いきなり羽搏《はばたき》をして一二尺飛び上がった。その風が突然余の顔を吹いた時、はっと思ったら、つい踏み外《は》ずして、すとんと落ちた。これはしくじったと垣根の下から見上げると、三羽共元の所にとまって上から嘴《くちばし》を揃《そろ》えて吾輩の顔を見下している。図太い奴だ。睨《にら》めつけてやったが一向《いっこう》利《き》かない。背を丸くして、少々|唸《うな》ったが、ますます駄目だ。俗人に霊妙なる象徴詩がわからぬごとく、吾輩が彼等に向って示す怒りの記号も何等の反応を呈出しない。考えて見ると無理のないところだ。吾輩は今まで彼等を猫として取り扱っていた。それが悪るい。猫ならこのくらいやればたしかに応《こた》えるのだが生憎《あいにく》相手は烏だ。烏の勘公とあって見れば致し方がない。実業家
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