んな黒装束《くろしょうぞく》が、三個も前途を遮《さえぎ》っては容易ならざる不都合だ。いよいよとなれば自《みずか》ら運動を中止して垣根を下りるより仕方がない。面倒だから、いっそさよう仕ろうか、敵は大勢の事ではあるし、ことにはあまりこの辺には見馴れぬ人体《にんてい》である。口嘴《くちばし》が乙《おつ》に尖《とん》がって何だか天狗《てんぐ》の啓《もう》し子《ご》のようだ。どうせ質《たち》のいい奴でないには極《きま》っている。退却が安全だろう、あまり深入りをして万一落ちでもしたらなおさら恥辱だ。と思っていると左向《ひだりむけ》をした烏が阿呆《あほう》と云った。次のも真似をして阿呆と云った。最後の奴は御鄭寧《ごていねい》にも阿呆阿呆と二声叫んだ。いかに温厚なる吾輩でもこれは看過《かんか》出来ない。第一自己の邸内で烏輩《からすはい》に侮辱されたとあっては、吾輩の名前にかかわる。名前はまだないから係わりようがなかろうと云うなら体面に係わる。決して退却は出来ない。諺《ことわざ》にも烏合《うごう》の衆と云うから三羽だって存外弱いかも知れない。進めるだけ進めと度胸を据《す》えて、のそのそ歩き出す。烏は知ら
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