猫のうちでこの芸が出来る者は恐らく吾輩のみであろう。それだから吾輩はこの運動を称して松滑りと云うのである。最後に垣巡《かきめぐ》りについて一言《いちげん》する。主人の庭は竹垣をもって四角にしきられている。椽側《えんがわ》と平行している一片《いっぺん》は八九間もあろう。左右は双方共四間に過ぎん。今吾輩の云った垣巡りと云う運動はこの垣の上を落ちないように一周するのである。これはやり損《そこな》う事もままあるが、首尾よく行くとお慰《なぐさみ》になる。ことに所々に根を焼いた丸太が立っているから、ちょっと休息に便宜《べんぎ》がある。今日は出来がよかったので朝から昼までに三|返《べん》やって見たが、やるたびにうまくなる。うまくなる度《たび》に面白くなる。とうとう四ヤ繰り返したが、四返目に半分ほど巡《まわ》りかけたら、隣の屋根から烏が三羽飛んで来て、一間ばかり向うに列を正してとまった。これは推参な奴だ。人の運動の妨《さまたげ》をする、ことにどこの烏だか籍《せき》もない分在《ぶんざい》で、人の塀へとまるという法があるもんかと思ったから、通るんだおい除《の》きたまえと声をかけた。真先の烏はこっちを見てに
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