》にやるとひどい目に逢うから、高々《たかだか》月に三度くらいしか試みない。紙袋《かんぶくろ》を頭へかぶせらるる事――これは苦しいばかりではなはだ興味の乏《とぼ》しい方法である。ことに人間の相手がおらんと成功しないから駄目。次には書物の表紙を爪で引き掻《か》く事、――これは主人に見付かると必ずどやされる危険があるのみならず、割合に手先の器用ばかりで総身の筋肉が働かない。これらは吾輩のいわゆる旧式運動なる者である。新式のうちにはなかなか興味の深いのがある。第一に蟷螂狩《とうろうが》り。――蟷螂狩りは鼠狩《ねずみが》りほどの大運動でない代りにそれほどの危険がない。夏の半《なかば》から秋の始めへかけてやる遊戯としてはもっとも上乗のものだ。その方法を云うとまず庭へ出て、一匹の蟷螂《かまきり》をさがし出す。時候がいいと一匹や二匹見付け出すのは雑作《ぞうさ》もない。さて見付け出した蟷螂君の傍《そば》へはっと風を切って馳《か》けて行く。するとすわこそと云う身構《みがまえ》をして鎌首をふり上げる。蟷螂でもなかなか健気《けなげ》なもので、相手の力量を知らんうちは抵抗するつもりでいるから面白い。振り上げた鎌
前へ
次へ
全750ページ中378ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング