ちょう》して大発明のように考えるのである。吾輩などは生れない前からそのくらいな事はちゃんと心得ている。第一海水がなぜ薬になるかと云えばちょっと海岸へ行けばすぐ分る事じゃないか。あんな広い所に魚が何|疋《びき》おるかェらないが、あの魚が一疋も病気をして医者にかかった試《ため》しがない。みんな健全に泳いでいる。病気をすれば、からだが利《き》かなくなる。死ねば必ず浮く。それだから魚の往生をあがる[#「あがる」に傍点]と云って、鳥の薨去《こうきょ》を、落ちる[#「落ちる」に傍点]と唱《とな》え、人間の寂滅《じゃくめつ》をごねる[#「ごねる」に傍点]と号している。洋行をして印度洋を横断した人に君、魚の死ぬところを見た事がありますかと聞いて見るがいい、誰でもいいえと答えるに極っている。それはそう答える訳だ。いくら往復したって一匹も波の上に今|呼吸《いき》を引き取った――呼吸《いき》ではいかん、魚の事だから潮《しお》を引き取ったと云わなければならん――潮を引き取って浮いているのを見た者はないからだ。あの渺々《びょうびょう》たる、あの漫々《まんまん》たる、大海《たいかい》を日となく夜となく続けざまに石
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