といささか本気の沙汰である。「天然居士《てんねんこじ》の墓碑銘《ぼひめい》ならもう二三遍拝聴したよ」「まあ、だまっていなさい。東風さん、これは決して得意のものではありませんが、ほんの座興ですから聴いて下さい」「是非伺がいましょう」「寒月君もついでに聞き給え」「ついででなくても聴きますよ。長い物じゃないでしょう」「僅々六十余字さ」と苦沙弥先生いよいよ手製の名文を読み始める。
「大和魂《やまとだましい》! と叫んで日本人が肺病やみのような咳《せき》をした」
「起し得て突兀《とっこつ》ですね」と寒月君がほめる。
「大和魂! と新聞屋が云う。大和魂! と掏摸《すり》が云う。大和魂が一躍して海を渡った。英国で大和魂の演説をする。独逸《ドイツ》で大和魂の芝居をする」
「なるほどこりゃ天然居士《てんねんこじ》以上の作だ」と今度は迷亭先生がそり返って見せる。
「東郷大将が大和魂を有《も》っている。肴屋《さかなや》の銀さんも大和魂を有っている。詐偽師《さぎし》、山師《やまし》、人殺しも大和魂を有っている」
「先生そこへ寒月も有っているとつけて下さい」
「大和魂はどんなものかと聞いたら、大和魂さと答えて行
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