る方がよほどいいぜ」東風君は何だか物足らぬと云う顔付で「あんまり、あっけないようだ。もう少し人情を加味した事件が欲しいようだ」と真面目に答える。今まで比較的おとなしくしていた迷亭はそういつまでもだまっているような男ではない。「たったそれだけで俳劇はすさまじいね。上田敏《うえだびん》君の説によると俳味とか滑稽とか云うものは消極的で亡国の音《いん》だそうだが、敏君だけあってうまい事を云ったよ。そんなつまらない物をやって見給え。それこそ上田君から笑われるばかりだ。第一劇だか茶番だか何だかあまり消極的で分らないじゃないか。失礼だが寒月君はやはり実験室で珠《たま》を磨いてる方がいい。俳劇なんぞ百作ったって二百作ったって、亡国の音《いん》じゃ駄目だ」寒月君は少々|憤《むっ》として、「そんなに消極的でしょうか。私はなかなか積極的なつもりなんですが」どっちでも構わん事を弁解しかける。「虚子がですね。虚子先生が女に惚れる烏かな[#「女に惚れる烏かな」に傍点]と烏を捕《とら》えて女に惚れさしたところが大《おおい》に積極的だろうと思います」「こりゃ新説だね。是非御講釈を伺がいましょう」「理学士として考えて見
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