云いますが、実際を云うとこれが文明の趨勢《すうせい》ですから、私などは大《おおい》に喜ばしい現象だと、ひそかに慶賀の意を表しているのです。買う方だって頭を敲《たた》いて品物は確かかなんて聞くような野暮《やぼ》は一人もいないんですからその辺は安心なものでさあ。またこの複雑な世の中に、そんな手数《てすう》をする日にゃあ、際限がありませんからね。五十になったって六十になったって亭主を持つ事も嫁に行く事も出来やしません」寒月君は二十世紀の青年だけあって、大《おおい》に当世流の考を開陳《かいちん》しておいて、敷島《しきしま》の煙をふうーと迷亭先生の顔の方へ吹き付けた。迷亭は敷島の煙くらいで辟易《へきえき》する男ではない。「仰せの通り方今《ほうこん》の女生徒、令嬢などは自尊自信の念から骨も肉も皮まで出来ていて、何でも男子に負けないところが敬服の至りだ。僕の近所の女学校の生徒などと来たらえらいものだぜ。筒袖《つつそで》を穿《は》いて鉄棒《かなぼう》へぶら下がるから感心だ。僕は二階の窓から彼等の体操を目撃するたんびに古代|希臘《ギリシャ》の婦人を追懐するよ」「また希臘か」と主人が冷笑するように云い放つ
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