てものはまるで無意味なものだったに違いない」とひやかすのだか賞《ほ》めるのだか曖昧《あいまい》な事を言ったが、それでやめておいても好い事をまた例の調子で布衍《ふえん》して、下《しも》のごとく述べられた。
「昔は亭主に口返答なんかした女は、一人もなかったんだって云うが、それなら唖《おし》を女房にしていると同じ事で僕などは一向《いっこう》ありがたくない。やっぱり奥さんのようにあなたは重いじゃありませんかとか何とか云われて見たいね。同じ女房を持つくらいなら、たまには喧嘩の一つ二つしなくっちゃ退屈でしようがないからな。僕の母などと来たら、おやじの前へ出てはい[#「はい」に傍点]とへい[#「へい」に傍点]で持ち切っていたものだ。そうして二十年もいっしょになっているうちに寺参りよりほかに外へ出た事がないと云うんだから情けないじゃないか。もっとも御蔭で先祖代々の戒名《かいみょう》はことごとく暗記している。男女間の交際だってそうさ、僕の小供の時分などは寒月君のように意中の人と合奏をしたり、霊の交換をやって朦朧体《もうろうたい》で出合って見たりする事はとうてい出来なかった」「御気の毒様で」と寒月君が頭を
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