い」
「顔でそんな事がどうして分ります」
「分らんばってんが――それじゃ奥さん少しも舐めなさらんか」
「そりゃ少しは舐めますさ。舐めたって好いじゃありませんか。うちのものだもの」
「ハハハハそうだろうと思った――しかし本《ほん》の事《こと》、泥棒は飛んだ災難でしたな。山の芋ばかり持って行《い》たのですか」
「山の芋ばかりなら困りゃしませんが、不断着をみんな取って行きました」
「早速困りますか。また借金をしなければならんですか。この猫が犬ならよかったに――惜しい事をしたなあ。奥さん犬の大《ふと》か奴《やつ》を是非一丁飼いなさい。――猫は駄目ですばい、飯を食うばかりで――ちっとは鼠でも捕《と》りますか」
「一匹もとった事はありません。本当に横着な図々図々《ずうずう》しい猫ですよ」
「いやそりゃ、どうもこうもならん。早々棄てなさい。私《わたし》が貰って行って煮て食おうか知らん」
「あら、多々良さんは猫を食べるの」
「食いました。猫は旨《うも》うござります」
「随分豪傑ね」
下等な書生のうちには猫を食うような野蛮人がある由《よし》はかねて伝聞したが、吾輩が平生|眷顧《けんこ》を辱《かたじけの
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