ように傾いた事実がある。それは外《ほか》でもない、人間もかようにうじゃうじゃいるが同じ顔をしている者は世界中に一人もいない。顔の道具は無論|極《きま》っている、大《おおき》さも大概は似たり寄ったりである。換言すれば彼等は皆同じ材料から作り上げられている、同じ材料で出来ているにも関らず一人も同じ結果に出来上っておらん。よくまああれだけの簡単な材料でかくまで異様な顔を思いついた者だと思うと、製造家の伎倆《ぎりょう》に感服せざるを得ない。よほど独創的な想像力がないとこんな変化は出来んのである。一代の画工が精力を消耗《しょうこう》して変化を求めた顔でも十二三種以外に出る事が出来んのをもって推《お》せば、人間の製造を一手《いって》で受負《うけお》った神の手際《てぎわ》は格別な者だと驚嘆せざるを得ない。到底人間社会において目撃し得ざる底《てい》の伎倆であるから、これを全能的伎倆と云っても差《さ》し支《つか》えないだろう。人間はこの点において大《おおい》に神に恐れ入っているようである、なるほど人間の観察点から云えばもっともな恐れ入り方である。しかし猫の立場から云うと同一の事実がかえって神の無能力を証
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