らかわれてすまして学校へ出ちゃいられん訳だ。僕も意志は決して人に劣らんつもりだが、そんなに図太くは出来ん敬服の至りだ」
「生徒や教師が少々愚図愚図言ったって何が恐ろしいものか、サントブーヴは古今独歩の評論家であるが巴里《パリ》大学で講義をした時は非常に不評判で、彼は学生の攻撃に応ずるため外出の際必ず匕首《あいくち》を袖《そで》の下に持って防禦《ぼうぎょ》の具となした事がある。ブルヌチェルがやはり巴里の大学でゾラの小説を攻撃した時は……」
「だって君ゃ大学の教師でも何でもないじゃないか。高がリードルの先生でそんな大家を例に引くのは雑魚《ざこ》が鯨《くじら》をもって自《みずか》ら喩《たと》えるようなもんだ、そんな事を云うとなおからかわれるぜ」
「黙っていろ。サントブーヴだって俺だって同じくらいな学者だ」
「大変な見識だな。しかし懐剣をもって歩行《ある》くだけはあぶないから真似《まね》ない方がいいよ。大学の教師が懐剣ならリードルの教師はまあ小刀《こがたな》くらいなところだな。しかしそれにしても刃物は剣呑《けんのん》だから仲見世《なかみせ》へ行っておもちゃの空気銃を買って来て背負《しょ》ってあ
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