の大僧《おおぞう》の癖にしかも教師じゃありませんか」
「さよう教師ですからな」と御客さんが云うと、金田君も「教師だからな」と云う。教師たる以上はいかなる侮辱を受けても木像のようにおとなしくしておらねばならぬとはこの三人の期せずして一致した論点と見える。
「それに、あの迷亭って男はよっぽどな酔興人《すいきょうじん》ですね。役にも立たない嘘《うそ》八百を並べ立てて。私《わた》しゃあんな変梃《へんてこ》な人にゃ初めて逢いましたよ」
「ああ迷亭ですか、あいかわらず法螺《ほら》を吹くと見えますね。やはり苦沙弥の所で御逢いになったんですか。あれに掛っちゃたまりません。あれも昔《むか》し自炊の仲間でしたがあんまり人を馬鹿にするものですから能《よ》く喧嘩をしましたよ」
「誰だって怒りまさあね、あんなじゃ。そりゃ嘘をつくのも宜《よ》うござんしょうさ、ね、義理が悪るいとか、ばつを合せなくっちゃあならないとか――そんな時には誰しも心にない事を云うもんでさあ。しかしあの男のは吐《つ》かなくってすむのに矢鱈《やたら》に吐くんだから始末に了《お》えないじゃありませんか。何が欲しくって、あんな出鱈目《でたらめ》を―
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