一番普通な容貌《ようぼう》を有している。ただし普通なだけに、これぞと取り立てて紹介するに足るような雑作《ぞうさく》は一つもない。普通と云うと結構なようだが、普通の極《きょく》平凡の堂に上《のぼ》り、庸俗の室に入《い》ったのはむしろ憫然《びんぜん》の至りだ。かかる無意味な面構《つらがまえ》を有すべき宿命を帯びて明治の昭代《しょうだい》に生れて来たのは誰だろう。例のごとく椽の下まで行ってその談話を承わらなくては分らぬ。
「……それで妻《さい》がわざわざあの男の所まで出掛けて行って容子《ようす》を聞いたんだがね……」と金田君は例のごとく横風《おうふう》な言葉使である。横風ではあるが毫《ごう》も峻嶮《しゅんけん》なところがない。言語も彼の顔面のごとく平板尨大《へいばんぼうだい》である。
「なるほどあの男が水島さんを教えた事がございますので――なるほど、よい御思い付きで――なるほど」となるほどずくめのは御客さんである。
「ところが何だか要領を得んので」
「ええ苦沙弥《くしゃみ》じゃ要領を得ない訳《わけ》で――あの男は私がいっしょに下宿をしている時分から実に煮《に》え切らない――そりゃ御困りでござ
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