私有も不合理ではないか。如是観《にょぜかん》によりて、如是法《にょぜほう》を信じている吾輩はそれだからどこへでも這入《はい》って行く。もっとも行きたくない処へは行かぬが、志す方角へは東西南北の差別は入らぬ、平気な顔をして、のそのそと参る。金田ごときものに遠慮をする訳がない。――しかし猫の悲しさは力ずくでは到底《とうトい》人間には叶《かな》わない。強勢は権利なりとの格言さえあるこの浮世に存在する以上は、いかにこっちに道理があっても猫の議論は通らない。無理に通そうとすると車屋の黒のごとく不意に肴屋《さかなや》の天秤棒《てんびんぼう》を喰《くら》う恐れがある。理はこっちにあるが権力は向うにあると云う場合に、理を曲げて一も二もなく屈従するか、または権力の目を掠《かす》めて我理を貫くかと云えば、吾輩は無論後者を択《えら》ぶのである。天秤棒は避けざるべからざるが故に、忍[#「忍」に傍点]ばざるべからず。人の邸内へは這入り込んで差支《さしつか》えなき故込[#「込」に傍点]まざるを得ず。この故に吾輩は金田邸へ忍び込む[#「忍び込む」に傍点]のである。
忍び込む度《ど》が重なるにつけ、探偵をする気はな
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