のであるか、腹の足《た》しにも血の道の薬にもならないものを、恥《はず》かし気《げ》もなく吐呑《とどん》して憚《はば》からざる以上は、吾輩が金田に出入《しゅつにゅう》するのを、あまり大きな声で咎《とが》め立《だ》てをして貰いたくない。金田邸は吾輩の煙草《たばこ》である。
忍び込む[#「忍び込む」に傍点]と云うと語弊がある、何だか泥棒か間男《まおとこ》のようで聞き苦しい。吾輩が金田邸へ行くのは、招待こそ受けないが、決して鰹《かつお》の切身《きりみ》をちょろまかしたり、眼鼻が顔の中心に痙攣的《けいれんてき》に密着している狆《ちん》君などと密談するためではない。――何探偵?――もってのほかの事である。およそ世の中に何が賤《いや》しい家業《かぎょう》だと云って探偵と高利貸ほど下等な職はないと思っている。なるほど寒月君のために猫にあるまじきほどの義侠心《ぎきょうしん》を起して、一度《ひとたび》は金田家の動静を余所《よそ》ながら窺《うかが》った事はあるが、それはただの一遍で、その後は決して猫の良心に恥ずるような陋劣《ろうれつ》な振舞を致した事はない。――そんなら、なぜ忍び込む[#「忍び込む」に傍点
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