ころが大違さ。その御母堂なるものが偉大なる鼻の所有|主《ぬし》でね……」迷亭が半《なか》ば言い懸けると、主人が「おい君、僕はさっきから、あの鼻について俳体詩《はいたいし》を考えているんだがね」と木に竹を接《つ》いだような事を云う。隣の室《へや》で妻君がくすくす笑い出す。「随分君も呑気《のんき》だなあ出来たのかい」「少し出来た。第一句がこの顔に鼻祭り[#「この顔に鼻祭り」に傍点]と云うのだ」「それから?」「次がこの鼻に神酒供え[#「この鼻に神酒供え」に傍点]というのさ」「次の句は?」「まだそれぎりしか出来ておらん」「面白いですな」と寒月君がにやにや笑う。「次へ穴二つ幽かなり[#「穴二つ幽かなり」に傍点]と付けちゃどうだ」と迷亭はすぐ出来る。すると寒月が「奥深く毛も見えず[#「奥深く毛も見えず」に傍点]はいけますまいか」と各々《おのおの》出鱈目《でたらめ》を並べていると、垣根に近く、往来で「今戸焼《いまどやき》の狸《たぬき》今戸焼の狸」と四五人わいわい云う声がする。主人も迷亭もちょっと驚ろいて表の方を、垣の隙《すき》からすかして見ると「ワハハハハハ」と笑う声がして遠くへ散る足の音がする。「
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