なに? 私《わたく》しで何でも弁じます?――お前は失敬だよ。妾《あた》しを誰だか知ってるのかい。金田だよ。――へへへへへ善く存じておりますだって。ほんとに馬鹿だよこの人あ。――金田だってえばさ。――なに?――毎度|御贔屓《ごひいき》にあずかりましてありがとうございます?――何がありがたいんだね。御礼なんか聞きたかあないやね――おやまた笑ってるよ。お前はよっぽど愚物《ぐぶつ》だね。――仰せの通りだって?――あんまり人を馬鹿にすると電話を切ってしまうよ。いいのかい。困らないのかよ――黙ってちゃ分らないじゃないか、何とか御云いなさいな」電話は長吉の方から切ったものか何の返事もないらしい。令嬢は癇癪《かんしゃく》を起してやけにベル[#「ベル」に傍点]をジャラジャラと廻す。足元で狆《ちん》が驚ろいて急に吠え出す。これは迂濶《うかつ》に出来ないと、急に飛び下りて椽《えん》の下へもぐり込む。
 折柄《おりから》廊下を近《ちかづ》く足音がして障子を開ける音がする。誰か来たなと一生懸命に聞いていると「御嬢様、旦那様と奥様が呼んでいらっしゃいます」と小間使らしい声がする。「知らないよ」と令嬢は剣突《けんつ
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