子の裏《うち》で鼻子の声がする。ここだと立ち留まって、左右の耳をはすに切って、息を凝《こ》らす。「貧乏教師の癖に生意気じゃありませんか」と例の金切《かなき》り声《ごえ》を振り立てる。「うん、生意気な奴だ、ちと懲《こ》らしめのためにいじめてやろう。あの学校にゃ国のもの烽「るからな」「誰がいるの?」「津木《つき》ピン助《すけ》や福地《ふくち》キシャゴがいるから、頼んでからかわしてやろう」吾輩は金田君の生国《しょうごく》は分らんが、妙な名前の人間ばかり揃《そろ》った所だと少々驚いた。金田君はなお語をついで、「あいつは英語の教師かい」と聞く。「はあ、車屋の神さんの話では英語のリードルか何か専門に教えるんだって云います」「どうせ碌《ろく》な教師じゃあるめえ」あるめえ[#「あるめえ」に傍点]にも尠《すく》なからず感心した。「この間ピン助に遇《あ》ったら、私《わたし》の学校にゃ妙な奴がおります。生徒から先生番茶[#「番茶」に傍点]は英語で何と云いますと聞かれて、番茶[#「番茶」に傍点]は Savage tea であると真面目に答えたんで、教員間の物笑いとなっています、どうもあんな教員があるから、ほか
前へ
次へ
全750ページ中187ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング