ばして、その報道を得々として逢う人に吹聴《ふいちょう》する以上は、車夫、馬丁《ばてい》、無頼漢《ぶらいかん》、ごろつき書生A日雇婆《ひやといばばあ》、産婆、妖婆《ようば》、按摩《あんま》、頓馬《とんま》に至るまでを使用して国家有用の材に煩《はん》を及ぼして顧《かえり》みざる以上は――猫にも覚悟がある。幸い天気も好い、霜解《しもどけ》は少々閉口するが道のためには一命もすてる。足の裏へ泥が着いて、椽側《えんがわ》へ梅の花の印を押すくらいな事は、ただ御三《おさん》の迷惑にはなるか知れんが、吾輩の苦痛とは申されない。翌日《あす》とも云わずこれから出掛けようと勇猛精進《ゆうもうしょうじん》の大決心を起して台所まで飛んで出たが「待てよ」と考えた。吾輩は猫として進化の極度に達しているのみならず、脳力の発達においてはあえて中学の三年生に劣らざるつもりであるが、悲しいかな咽喉《のど》の構造だけはどこまでも猫なので人間の言語が饒舌《しゃべ》れない。よし首尾よく金田邸へ忍び込んで、充分敵の情勢を見届けたところで、肝心《かんじん》の寒月君に教えてやる訳に行かない。主人にも迷亭先生にも話せない。話せないとすれば
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