情けの息を吹く為には、吾《わが》肱《ひじ》をも折らねばならぬ、吾|頚《くび》をも挫《くじ》かねばならぬ、時としては吾血潮さえ容赦もなく流さねばならなかった。懸想されたるブレトンの女は懸想せるブレトンの男に向って云う、君が恋、叶《かな》えんとならば、残りなく円卓の勇士[#「円卓の勇士」に白丸傍点]を倒して、われを世に類《たぐ》いなき美しき女と名乗り給え、アーサーの養える名高き鷹《たか》を獲て吾|許《もと》に送り届け給えと、男心得たりと腰に帯びたる長き剣《つるぎ》に盟《ちか》えば、天上天下に吾志を妨ぐるものなく、遂《つい》に仙姫《せんき》の援《たすけ》を得て悉《ことごと》く女の言うところを果す。鷹の足を纏《まと》える細き金の鎖の端《はし》に結びつけたる羊皮紙を読めば、三十一カ条の愛に関する法章であった。所謂《いわゆる》「愛の庁」の憲法とはこれである。……盾《たて》の話しはこの憲法の盛に行われた時代に起った事と思え。
 行く路《みち》を扼《やく》すとは、その上《かみ》騎士の間に行われた習慣である。幅広からぬ往還に立ちて、通り掛りの武士に戦《たたかい》を挑《いど》む。二人の槍《やり》の穂先が撓
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