わざと立て切った。隔《へだて》の襖《ふすま》だけは明けてある。片輪車の友禅《ゆうぜん》の裾《すそ》だけが見える。あとは芭蕉布《ばしょうふ》の唐紙《からかみ》で万事を隠す。幽冥《ゆうめい》を仕切る縁《ふち》は黒である。一寸幅に鴨居《かもい》から敷居《しきい》まで真直《まっすぐ》に貫いている。母は襖《ふすま》のこちらに坐りながら、折々は、見えぬ所を覗《のぞ》き込むように、首を傾けて背を反《そ》らす。冷かな足よりも冷かな顔の方が気にかかる。覗くたびに黒い縁は、すっきりと友禅の小夜着《こよぎ》を斜《はす》に断ち切っている。写せばそのままの模様画になる。
「御叔母《おば》さん、飛んだ事になって、御気の毒だが、仕方がない。御諦《おあきらめ》なさい」
「こんな事になろうとは……」
「泣いたって、今更《いまさら》しようがない。因果《いんが》だ」
「本当に残念な事をしました」と眼を拭う。
「あんまり泣くとかえって供養《くよう》にならない。それより後《あと》の始末が大事ですよ。こうなっちゃ、是非甲野さんにいてもらうより仕方がないんだから、その気になってやらないと、あなたが困るばかりだ」
 母はわっと泣き出
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