ち切った箔《はく》の小口だけが鮮《あざや》かに見える。間から紫の栞《しおり》の房が長く垂れている。栞を差し込んだ頁《ページ》の上から七行目に「埃及《エジプト》の御代《みよ》しろし召す人の最後ぞ、かくありてこそ」の一句がある。色鉛筆で細い筋を入れてある。
すべてが美くしい。美くしいもののなかに横《よこた》わる人の顔も美くしい。驕《おご》る眼は長《とこしな》えに閉じた。驕る眼を眠《ねむ》った藤尾の眉《まゆ》は、額は、黒髪は、天女《てんにょ》のごとく美くしい。
「御線香が切れやしないかしら」と母は次《つぎ》の間《ま》から立ちかかる。
「今上げて来ました」と欽吾が云う。膝《ひざ》を正しく組み合わして、手を拱《こまぬ》いている。
「一《はじめ》さんも上げてやって下さい」
「私《わたし》も今上げて来た」
線香の香《におい》は藤尾の部屋から、思い出したように吹いてくる。燃え切った灰は、棒のままで、はたりはたりと香炉の中に倒れつつある。銀屏《ぎんびょう》は知らぬ間《ま》に薫《くゆ》る。
「小野さんは、まだ来ないんですか」と母が云う。
「もう来るでしょう。今呼びにやりました」と欽吾が云う。
部屋は
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